時間切れ!倫理

 60 出エジプト

歴史上のイスラエル人

(ア) 出エジプト
 歴史上のイスラエル人とユダヤ教についてみてみましょう。
 イスラエル人たちは、どのように生活してきたか。彼らは、エジプトとメソポタミアの間のパレスチナ地方に、前15世紀ころ住み着いた人たちです。このあまり豊かではない地域で、牧畜・農耕などをしていました。部族単位で生活し、まだ国家は形成していない。少しでも天候不順になると、農作物は枯れるし羊は死んでしまう。ギリギリのところで生活していた。
 紀元前14世紀頃に、一部のイスラエル人が、飢饉に際してエジプトに移住した。このあたりの話は、歴史的事実と伝説がごちゃごちゃになっているようですが、あまり気にせず聞いてください。
 エジプト人から見ると、移住してきたイスラエル人は難民ですよね。難民が押し寄せてきた。イスラエル人たちは、とりあえずエジプトに住まわせてもらったけれど、差別されてだんだん地位が低下する。奴隷みたいに、こき使われるようになった。「このままではダメだ。我々は奴隷ではない、エジプトから出よう」ということになり、紀元前13世紀頃に、エジプトのイスラエル人たちが、再びパレスチナ地方をめざして移動する事件が起きる。
 これが、最初に確認できるイスラエル人たちの歴史的事実のようです。これを「出エジプト」という。このときのイスラエル人の指導者がモーセ。
 プリントの右側を見てください。旧約聖書に載っている系図です。旧約聖書の前半「モーセ五書」と呼ばれる部分は、神様が最初に作った人間アダムとエヴァの子孫が、どのようにして神と関わりながら繁栄してきたか、というイスラエル人たちの歴史の本です。
 そして、そのあとの方にモーセが出てくる。この系図の下の方にあります。チェックしておいてください。
 モーセの名前が旧約聖書の系図に出てくるということは、旧約聖書が作られたのはこの事件よりもあとなんだな。多分、モーセくらいが最初の実在の人物。歴史学者の中にはモーセは実在の人ではない、後から作られた架空の人物という人もいますけれど、このあたりから実際の話と聖書の記述がオーバーラップしてくる。この事件から後の聖書の歴史的な記述は、多分何かしらの根拠に基づいていると思われます。モーセの下に、ダビデ・ソロモンという名前がでてきます。このあたりは実在です。
 一方、「出エジプト」以前の話は、様々な伝承や神話を、後の時代になってより古い時代の話として記述したのではないかと思われます。

 2021年12月12日

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