時間切れ!倫理

 67 旧約聖書 ヨブ記

(カ) ヨブ記

 旧約聖書には嫌な話が実に多い。もうひとつだけ紹介します。「ヨブ記」です。
 ヨブという男がいました。信仰心の篤い男で、神様も彼のことを愛でている。ある時、神の前にサタンがやってくる。神がサタンにヨブの信仰心の篤さを自慢すると、サタンは「ヨブは子宝や財産に恵まれているから、信仰しているだけで、子供や財産が亡くなれば神を恨みますよ」という。
 サタンに挑発された神は、「それならヨブから奪ってみろ」という。そこでサタンによって、ヨブの10人の子供たちは皆大風で倒れたテントの下敷きになり死んでしまい、10000頭以上いた家畜も次々とほかの部族に襲われてすべて失ってしまいます。
 ヨブはどうしたか。すべてなくしてしまったが、もともと私は何も持たず裸でこの世に生まれてきたのだと考え、神をたたえて恨み言の一つもいいません。
 この結果を見て、神がヨブの信仰心をサタンに自慢すると、サタンはヨブの身体を痛めつければ、恨み言をいいますよ、とまた挑発します。再び神はサタンにヨブを痛めつける許可を与える。その結果、ヨブはひどい皮膚病になる。痛みが激しく裸で灰の上に座って瓦のかけらで皮膚をかきむしり、全身血だらけという状態になる。
 ヨブがひどい病にかかったことを聞いて3人の友人訪ねてくるのですが、あまりにひどい状態に衝撃をうけて3人とも一週間声をかけることができなかった。ようやく口を開いた友人たちが、何をいうかというと、皆ヨブを責めるのです。当時、病気になるということは神の罰だと考えられていたのです。だから、こんなひどい病気になるのは神に対して重い罪を犯したに違いないと考えたのです。
 しかし、ヨブは、自分は神に背いていない、神に謝る必要ないと言い張る。ヨブは決して神様に謝罪をしようとしないけれど、自分が生まれてきたことは呪います。神を恨んだりはしない。そういう話です。
 最後に神の声が聞こえて、「神の活動の目的は人間には理解できないのだ」という。神の意図は人間にはわからないと。ヨブはそれで満足するという話です。これがユダヤ教の神様です。最後にはヨブの財産は元の倍になり、再び10人の子供を授かるのですが、常識的に考えれば理不尽な神様です。

※吉本隆明は, この話は自然災害が元型だろうと話している。自然災害は何の理由もなく、善人悪人の区別なく誰にも襲い掛かる、と。

 2022年1月15日

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