時間切れ!倫理

 95 四諦八正道

 ここからは、単語をざっと書いていきます。たくさんの単語があります。教科書にはバラバラに書いてあります。ブッダがこんなことを、どこでいっているのか、お経のどこに書いてあるのだと聞かれてもわかりません。ブッダの教えの総体を考えた時に、こんなふうに考えているだろうということです。
 ガウタマが到達した悟りへの道を、あえて言葉にすればどうなるか。これが四諦八正道(したいはっしょうどう)です。仏教用語は、特殊な読み方をするので注意してください。
 四諦八正道の「諦(たい)」という字は、諦(あきら)めるという意味ではなく、真理という意味です。四つの真理を頭の中できちんと理解し、八つの正しい行いをすれば悟りが開けますよということです。
 その根本は何かというと中道です。ガウタマは、はじめに森に入って様々な苦行をしました。しかし、彼は苦行では悟れないと思って、菩提樹の下で瞑想しましたね。瞑想したら悟ったのです。この体験から、彼は体を苦しめる難行苦行を否定します。では麻薬やセックスなど、快楽による悟りはどうかというと、それもダメです。難行苦行もダメ、快楽もダメ、その間が中道です。中道とは何か。それは考えることです。思考です。彼は瞑想して悟ったのですよね。瞑想とは思考です。では何を思考するのか。それが四諦です。苦諦(くたい)、集諦(じったい)、滅諦(めったい)、道諦(どうたい)、この四つです。
 一つ目の苦諦は、人生は苦しいということを知りなさい、ということです。生きていることは苦しい。「あー楽しいなあ」と思うのは間違いです。「今月の体育祭は楽しみだな」、それは間違いです。この世には苦しみしかないということを、思考によってちゃんと知りなさいということです。これはなかなか難しい。楽しいと思ってしまいますよね。
 では何が苦しいかというと、四苦八苦(しくはっく)です。四苦とは、生きること、老いること、病むこと、そして死ぬこと、この四つです。全て苦しみです。さらにあと四つの苦しみもあります。愛別離苦(あいべつりく)、愛する者と別れる苦しみ。怨憎会苦(おんぞうえく)、誰かを憎むという苦しみ。求不得苦(ぐふとくく)、求めるものが得られない苦しみ、欲しいものが手に入らない苦しみ。五蘊盛苦(ごうんじょうく)、様々な感覚や記憶に執着する苦しみ。これは観念的で少し難しいですね。感覚に執着する苦しみ。これで四つあります。最初の四つである四苦と合わせると、八つになるので四苦八苦といいます。たくさんの苦しみがあることを知りなさいと。これが苦諦です。
 なぜ苦しいのか。欲望があるからだ、というのが集諦。苦しみの原因は欲望です。欲望の対象を手に入れても、やがてすべては消え去っていきます。これが諸行無常(しょぎょうむじょう)。全てのものには実態はありません。これが諸法無我(しょほうむが)。この世には、様々なものが存在しているように見えるけども、すべてのものは関係性によって成り立っているだけで、実体はないのだと考えます。これが縁起(えんぎ)です。誰かのことをすごく愛していても、愛という実体がどこかにあるわけではない。自分と誰かの関係の中に愛があるだけである。すべては関係性から発生する。これが縁起。依存関係によって成り立っていることを因縁(いんねん)といいます。我執(がしゅう)、ないはずの自分にとらわれる。煩悩(ぼんのう)、自分を悩ます欲望。様々な仏教用語がでてきます。煩悩のワースト3のことを、三毒という。貪欲、瞋恚(しんに)、怒ることです、愚痴。細い単語がたくさん並んでいるのですが、試験に出るので覚えておいてください。
 滅諦。人生は苦しみであり、苦しみの原因が欲望であるならば、欲望を消し去ればいい。これが滅諦です。欲望を消せば、涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)、つまり悟りの境地に至ります。
 欲望をなくす方法が道諦です。八正道によって欲望をなくすことができるという真理が道諦です。
 四諦は以上です。あまりはっきりしませんね。これを聞いたからといって、悟りが開けるわけではない。はっきりいって仏教の教えは理屈っぽい。すぐに効く特効薬のようなものではない。そういう意味でははっきりしない。
 中道とはそういうことです。あれをやれ、これをやれ、断食しろ、というのはわかりやすいですが、理屈がズラズラと並んでいます。そして、お前も考えろ、そしてその道へ行け、というわけです。何をしたらいいのかよく分かりませんが、たぶん当時としてはそれが画期的だったのです。
 では八正道は何か。試験には出てくるので、言葉だけは見ておいてください。正見(しょうけん)、正しい見解を持ちなさい。正思(しょうし)、正しい思考しなさい。正語(しょうご)、正しい言葉を使いなさい。正業(しょうごう)、正しい行いをしなさい。正命(しょうみょう)、正しい生活を送りなさい。正精進(しょうしょうじん)、正しい努力をしなさい。正念(しょうねん)、正しい記憶を持ちなさい。正定(しょうじょう)、正しい精神統一をしなさい。以上、それだけ。
 やはり、何をしたら良いのか分かりません。これは修行の話なので、実際に出家して、ガウタマに弟子入りすれば、こうしなさい、という具体的な方法をいってくれるのでしょうが、言葉にするのは難しいと、彼自身がいっていますからね。それをあえて言葉にしているのだから、僕らがここでこれを読んでもわかるはずがないのかなと思います。

 2022年9月3日

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