時間切れ!倫理

 63 旧約聖書 天地創造

(ア) 天地創造
 せっかくですから、旧約聖書の話を ちょっとしておきましょう。
 ヤコブという人がイスラエル人の共通の祖先と思われています。
 それ以前のことは神話のお話に近い。けれどそのお話をみるとイスラエル人たちがどういう信仰を持っているからわかる。
 旧約聖書の冒頭に天地創造の話が出てくる。神がまずいった。「光あれ」。そうすると光ができた。神は「よしよし、これを昼と名付けよう」。やがて闇が訪れた。「よしよし、これを夜と名付けよう」。こんなふうにして第1日が終わる。第2日目は水を上下に分ける。第3日目は水を一箇所に集めて大地を作る。第4日目は植物をつくる。第5日目にさまざまな動物を作ります。そして第6日目に神はアダムを作った。神は自分の像に似せて泥をこねて形を作り、そこに息を吹き込む。そうすると命が宿って人になりました。それがアダム。最初の人です。一人ぼっちでかわいそうなので、神は寝ているアダムの肋骨から骨を一本抜き取って、そこから女を作った。エヴァです。これは皆さんも知っていると思います。神が最初に作ったのがこの二人です。
 この天地創造の話、1日目から6日目までで、光から人間までを作って、7日目に神は休まれた。これが6日働いて1日休むという一週間の風習の起源。というか、それは逆で、これがユダヤ人の生活パターンだったので、それを神話に投影したのでしょうけれど。
 これがキリスト教にも受け継がれ、現在の世界に広がった。日曜日が休日なのは、神が休んだ日だからなのです。神ですら休んだのに、人が働くなんてとんでもないです。この日は働いてはいけない。安息日という。
 余談ですが、1981年公開の『炎のランナー』という映画があります。1924年のパリオリンピックを目指すイギリスの陸上選手たちの物語です。その中のエピソードに100m走のイギリス代表選手の話がある。彼は牧師さんなのです。代表団に入って、パリに向かう途中で100m走の予選が日曜日だということが分かる。安息日だから働いてはだめ。当然競技に出るのはだめです。交渉して予選の日を動かす手もあるけども、イギリス代表選手団幹部はそこまでする気はない。彼は悩んだ末、予選出場を断念する。それが新聞にも載って、安息日を守る決心をたたえる人もいれば、優勝候補なのに棄権することを非難する人もいることが描かれていました。信仰をまじめに守っている人にとっては、安息日は重大なことなのだ、ということがよくわかる映画でした。

 2021年12月24日

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