時間切れ!倫理

 65 旧約聖書 カインとアベル・大洪水

(ウ) カインとアベル

 アダムとエヴァの息子、カインとアベルの話はユングのカイン・コンプレックスで触れましたね。長男カインは農業、次男アベルは牧畜の仕事をします。二人は神様にそれぞれ穀物と羊の肉を捧げた。やってきた神は、カインが捧げた穀物には目もくれず、アベルが捧げた羊の肉を取った。
 それを見てカインは嫉妬する。「神は俺の捧げものに見向きもしてなかった」と嫉妬したカインがアベルを殺すという話です。兄弟殺しです。
 カインが農耕文化、アベルが牧畜文化を象徴しているといわれる。古代のイスラエル人の生業としては多分牧畜が主流だった。なので農耕民より牧畜民(=イスラエル人)の方が神様に可愛がられるのだ、というような気持ちが反映されている話なのかなと思います。
 弟を殺したカインは神によって罰せられて「エデンの東」に追放された。余談ですが、昔のアメリカの映画でジェームス・ディーンが主演した『エデンの東』は、お父さんと二人の兄弟の話で、お父さんに可愛がってほしいのに可愛がってもらえず、すねてちょっとかわいそうな人生を歩む弟の話。

(エ) ノアの箱舟

 カインはそこで妻をめとり、その子孫は町を作るのですが、この人たちの話はこれ以後旧約聖書には出てこない。

※「カインの妻はいったいどこから来たのか?」問題。聖書をちゃんと読むと、こういう矛盾はたくさん見つかる。様々な言い伝えを一つの話にまとめたので、こういう矛盾がおきる。カインの妻の由来についてかんがえると、アダムとエヴァの誕生も楽園追放も全く意味が異なってくる可能性がある。しかし、授業では宗教の紹介なので、信仰の論理に従って話をつづける。護教的立場からはどのように説明しているのだろうか?

 カインとアベルの事件のあと、アダムとエヴァにもう1人息子ができます。これがセト。セトの子孫を旧約聖書は描きます。セトの子孫はどんどん増えていきます。このあと出てくるのがノアの方舟の話です。
 神様が地上を見ると、人々は神への信仰を失い、すっかり堕落して快楽にふけっている。神は、人を作ったことは失敗だったと思い、地上から人類を全て拭い去ろうと考えた。「拭い去る」っていうのはすごい表現ですね。
 人類、動物全消去しようとした時に、ノアとその家族だけは熱心に神様を信仰していたので、彼らだけは助けてやろうと思った。神はノアにお告げをして、船を作り(船の大きさまで指定している)、家族とすべての動物を一つがいづつ捕まえて船に乗せろと命じた。やがて、大雨が降って地上は全て水没し、箱舟に乗っていたノアの一家と動物たちだけが生き残った。
 これも罰の話なのですよ。神を忘れてしまった人類への罰は、皆殺しです。この神様は結構きつい。

 2022年1月4日

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