時間切れ!倫理

 70 ユダヤ教の特徴1

(ア) 一神教、偶像崇拝禁止
 モーセの十戒はどんなものか。戒は戒律。信仰上守るべき掟だ。
 1、「あなたは私をおいて他に神があってはならない。」これが一神教です。私以外の神を信じるなといっている。
 2、「あなたはいかなる像を作ってはならない。」これが偶像崇拝禁止です。神様の像を作っては駄目。仏教も最初の頃は像を作りませんね。やがてギリシャ人の影響で仏像を作り始めるけれど、仏教も元々は像を作らなかった。ユダヤ教も神の像を作っちゃ駄目。「いかなる像も」だから神以外もダメなんだね。
 なぜダメかというと、一般的説明は、神様の像を作ると人間は「ありがたい」と思って拝みます。仏像を考えるとわかりやすい。お寺にいって仏像があったら拝みますよね。でも仏像はただの木の彫刻です。仏像≠仏様。神像を作っても、きっと人間は拝んでしまうでしょう。でも本当の神はどこか別のところにいる。神が別のところにいるのに、人が作った像を拝んだらどうなるか。これは一神教に反するでしょう。
 ユダヤ教は偶像崇拝禁止を厳密に守っていきます。ユダヤ教から枝分かれしたキリスト教も偶像崇拝禁止を引き継ぎますが、ちょっと妥協的です。だからキリスト教はイエスの像を作って拝みます。マリア像を拝みます。ただし神の像だけは作らない。カトリックの教会へ行くとたくさんの像があるけども、神像だけはさすがにない。
 イスラーム教もユダヤ教から枝分かれしたので偶像崇拝禁止を引き継いでいます。イスラーム教はきっちり守っています。インドやイランにいくと、ちょっと緩んで人物像は描きますが、アラブ人のイスラーム教徒は厳密に守っているようです。

 3、「あなたの神の名をみだりに唱えてはならない。」神様の名前はヤハウェでした。これを唱えるな、だから「ヤハウェ」と声に出していうのはダメなんですよ。
 でも「唱えるな」とあって、記すな、書くな、とはいっていない。記録することは禁止されていない。だから、モーセが炎を見て神様に名前を告げられる場面で、神が私はヤハウェであるといったということは、旧約聖書の文章にはちゃんと書いてある。「ヤハウェ」と書いてある。ただし古代ヘブライ語は母音を表記しない。子音だけで文字を書きます。現在のアラブ人、アラビア語も正式な書法では母音を書かない。だから読むのはすごく難しいらしい。昔のイスラエル人たちも母音を書かなかった。アルファベットで表すと「YHWH」と書いた。
 ところが、聖書を声に出して読み進めていってこの場所、「YHWH」と書いてある場所に来たら何と読むか。ヤハウェと読んではダメですよ。「どうする?」っていう話になって、ここだけ別の呼び方をするようになった。「アドナイ」と読みました。日本語に訳すと「主」です。こうして、「YHWH」を「ヤハウェ」と読まずに、仮に「アドナイ」「主」と読むようになった。
 やがて何百年もアドナイと読んでいるうちに、本当はどう読むのか、読み方がわからなくなってしまった。みんな忘れてしまった。19世紀ぐらいに聖書の学問的研究が進んでくると、一体この主の名前は何かという研究が始まって、さまざまな説が唱えられた。20世紀の中頃まで一般的にいわれていた読み方が「エホバ」。聞いたことがあるでしょう。しかしさらに研究が進むと「ヤハウェ」が正しい読み方だろうということになってきました。
 日本で出版されている聖書をみると、本当は「ヤハウェ」と書いてあるはずのところも「主」を書いてある。「ヤハウェ」と書いてあったら、そのように声に出して読んでしまいますから、信仰上は困るのでしょう。キリスト教会系団体が訳した本は「主」。しかし岩波文庫とか、中央公論社の翻訳では「ヤハウェ」と書いてある。こちらは学問的に正確に訳しているのでしょう。翻訳者の立場によって訳し方が違う。面白いところです。

 4、「安息日をこころにとどめ、これを聖別せよ。」安息日は大事です。これも、キリスト教、イスラーム教に引き継がれていきます。
 5番目から10番目までは、ほとんど一般的な道徳です。5、あなたの父母を殺してはならない、6、姦淫してはならない。姦淫とは夫婦間以外の性的交渉です。7、盗んではならない。9、隣人に関して偽証してはならない。嘘ついちゃだめだよってことです。10、隣人の家を欲してはならない。欲するなというのはちょっと難しいね。どういうことなんだろう。たぶん、うらやむなということだと思います。以上。十戒は重要なところなので、特に1から4まではしっかり把握しておいてください。

 2022年2月5日

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