時間切れ!倫理

 87 偶像崇拝禁止・聖職者など

(オ) 偶像崇拝禁止

 偶像崇拝の禁止はイスラーム教だけの特徴ではなく、モーセの十戒のユダヤ教、それを引き継いだキリスト教も同じなのですが、イスラーム教はこの偶像崇拝の禁止を忠実に守っています。イスラーム世界では神はもちろん、ムハンマドの姿も描きません。モスクにはアラベスク模様が描かれているだけです。
 キリスト教も本来は偶像崇拝禁止をちゃんとしなければいけないのですが、キリスト教はグダグダです。聖母マリアの像があったりイエスが磔けられた像があったりします。カトリック教会に入ったことのある人ならご存知と思いますが、様々な聖人の像が置いてある。カトリックを批判して生まれたプロテスタントの教会は、偶像崇拝禁止を意識してだとおもいますが、聖人像を置くことはなく、かなりすっきりしています。しかし、イエス像やマリア像を否定するわけではない。
 イスラーム教徒は戒律をちゃんと守っている。この一点に関しては、多分キリスト教の人たちは頭が上がらないと思います。

(カ) その他

 その他特徴的な点をいくつかいっておきます。
 イスラーム教では、ムハンマドは「最後にして最大の預言者」とされています。神は様々な人に声を授けてきました。イエスも神の言葉を授かった、しかし何百年か経るうちに人々はイエスの教えを間違って解釈するようになった。そこでその誤りを訂正するために、神はムハンマドに言葉を与えたとされています。
 そのムハンマドが最後の予言者だというのです。ムハンマドの死後、この世界には二度と予言者は出現しない。つまりムハンマドの教えが最終決定版だということです。しかも最大の預言者なので、預言者の中でムハンマドが一番偉い。だから、イスラーム教が最高なのです。これはキリスト教から見ると非常に悔しい。「俺たち間違ってるのかよ」とキリスト教徒は思いますよね。だからキリスト教はイスラーム教が気に食わないということになるのでしょう。

 イスラーム教では聖職者の存在を認めません。これは多くの人が勘違いしている点です。ムハンマドによれば、神はあまりにも偉大な存在で、 それに比べれば人間は非常に小さく卑しい存在です。とてもではないが、人間には神が何を考えているかなどわかりっこない。
 だから、「俺の方がお前よりも神のことをよくわかっているぜ」「俺が神の教えを忖度してお前に教えてやるよ」という人、これがお坊さん、聖職者ですね、こういう存在はありえない。神から見れば皆同じ。なので聖職者は存在しません。信者は皆平等です。ニュースを見ているとお坊さんのような人が出てきますが、彼らはみな学者、イスラーム法学者です。聖職者ではありません。
 したがってモスクは、キリスト教の教会や仏教のお寺のように聖職者がいる場所ではありません。そもそも聖職者が存在しないのだから当たり前ですね。モスクは単なる共同の礼拝場所です。公民館、集会所に限りなく近い。寺子屋のような学校が付属している場合もあります。その場合は、ウラマーと呼ばれるイスラーム法学者が教師となります。

 2022年7月17日

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