時間切れ!倫理

 04 オイデップス神話

 オイデップス・コンプレックスの元になったギリシャ神話のオイデップス王の話をしておきましょう。

 昔々ギリシャにテーベという国がありました。王様はライオス、王妃をイオカステといいます。テーベ王ライオスはある時アポロン神の宣託を受けます。彼が授かった信託は次のようなものでした。王妃との間に生まれた男子は、やがて必ず父親を殺し、母親と交わるだろう、と。
 神託の実現を恐れた国王は、王妃を遠ざけて交わらないように気をつけていましたが、ある時酔った勢いで交わり、王妃は身ごもります。王妃が男児を出産するとライオスはその子を殺すように命じます。赤ん坊殺害を命じられたイオカステは殺すに忍びず、家臣に赤ん坊を国境の山中に捨てるように命じました。
 この赤ん坊はコリント国の羊飼いに拾われます。コリント王夫妻には子どもがいなかったため、結局この赤ん坊はコリント王の実の子供として育てられることになります。この赤ん坊がオイデップスです。

 オイデップスはすくすくと成長し立派な若者になりました。自分の生い立ちは知りません。ある時オイデップスが仲間とスポーツ競技をして相手を負かした。負けた相手が「拾われた子供のくせに」的な捨て台詞をはいた。その一言が気になったオイデップスは、父であるコリント王、母である王妃に自分の出生についてたずねるのですが、 二人はごまかして曖昧な答えしか言いません。

 そこでオイデップスは真実を知るためにデルフォイ神殿の神託を請います。ところが授かった神託は、「お前は実の父を殺し母親と交わるだろう」というものでした。驚いたオイデップスは、神託の実現を避けるためにコリントの町を捨てて旅に出ます。

 旅の途中、山中の峠道でオイデップスは立派な馬車に乗り何人もの従者を従えた老人と鉢合わせになります。どちらが道を譲るかで争いになり、最終的にオイデップスは相手の老人と従者たちを殺してしまいます。

 やがてオイデップスはテーベの町にやってきます。テーベは大騒ぎになっていました。国王が旅の途中で何者かに殺され、また町のはずれの街道にスフィンクスという怪物が現れて通行する者たちを食べるというのです。町ではスフィンクスを倒したものに王位を授け、王妃イオカステの夫とするとのお触れが出されていました。

 これを知ったオイデップスは街道に陣取る化け物スフィンクスを退治しに出かけます。スフィンクスは街道を通る旅人たちに謎をかけ、謎が解けない者を食べていました。オイデップスもスフィンクスから同じ謎を出されます。それが「朝は4本足、昼は2本足、日暮れには3本足になるものは何だ」。オイデップスは答える。「それは人間だ」。

 謎を解かれたスフィンクスは倒され、オイデップスは英雄としてテーベの町に帰還、イオカステを妻としてテーベの王となりました。

 このあと何年もののち、テーベでは疫病が流行り、災いが続きます。原因を探るオイデップス王に、先の王であるライオス殺しの犯人が捕まらない限り災いは続くだろうという神託が降ります。オイデップス王はライオス殺しの犯人を必死に探します。王が殺された時にただ一人生き延びていた従者を見つけ出し、その証言を聞いたオイデップスは、かつて自分が峠道で殺した老人がライオス王であること、また自分が実はライオスとイオカステの子供であることも知るに至ります。

 神託の実現を避けるために行なった様々な行為の結果、神託が実現されたことを彼は知るわけです。実の息子を夫としたことを知ったイオカステは自殺し、オイデップスは自分で自分の目をつぶし放浪の旅に出たのでした。

 以上がオイデップス神話です。

【参考図書】呉茂一『ギリシア神話☆〔新装版〕☆』(初版1969、新潮社)

 2021年03月19日

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