時間切れ!倫理

 08 コンプレックス、ペルソナ

コンプレックス

 ではユングは、無意識の中の何を問題にしたのか。

 ひとつは、コンプレックス。よく聞く言葉ですが、これはユングが用いはじめた用語です。劣等感という意味でつかわれますが、それは俗流。ユングの使い方は違います。辞書で調べると、コンプレックスは複合体という意味。これをユングは心理的複合体という意味で使う。ファザー・コンプレックス、マザー・コンプレックス。これがユングの使い方。お父さんやお母さんに、劣等感を持っているわけではない。大好きで甘えたい、でも思うように受け入れてもらえなくて、失望感を味わわされ、敵意も持つ。大好きだけど、嫌い、こういうのを心理的複合体という。

 メサイヤ・コンプレックスというのもある。メサイヤは救世主のこと。自分は救世主のように人を救える特別な存在だと思っている人がいる。でも、その一方で、自分は生きていても役にたたないという気持ちも持っている。これがメサイヤ・コンプレックス。このコンプレックスを持っている人は、医療系に進む人が多いらしい。

 カイン・コンプレックスは、兄弟姉妹関係で、複雑な心理を抱えていることをいう。
さまざまなコンプレックスがあって、これが精神に病をもたらす、と考えました。

ペルソナ

 ペルソナもユングがいいだしたことです。日本語に訳せば仮面です。人は多くのペルソナを持ち、日常の様々な場面で、ペルソナ、仮面を使い分けている。家でのペルソナ、学校での、教師の前での、大好きな友達と一緒の時の、クラブの先輩の前での、さまざまなペルソナをもっている。自分では意識していないかも知れないけれど、ペルソナを付け替えている。端(はた)から見ていると、よくわかりますよね。あの子は、先輩の前では全然態度が違うとか。

 このペルソナの付け替えがうまくできない人が問題となる。たとえば、いつもポジティブで前向きで陽気で、みんなのことを気にかける、クラスのムードメーカーで、人気者。そんな人がいる。でも、本人はそのペルソナを外すことができなくて苦しんでいる。本当の自分ではないという思いで、苦しい、といった具合です。

 2021年03月19日

次のページへ
前のページへ
目次に戻る