さらに進んだのがルソー(1712生)。ポップスもロックもイギリス人ですが、ルソーはフランス人です。著書は『人間不平等起源論』『社会契約論』など。
ルソーによれば、自然状態が理想の状態です。国家も政府もない状態がベスト。平和で自由、平等で、みんなのびのびいきいき暮らしている。ところが文明が生まれ、国家ができてしまった。彼によれば文明社会は堕落です。有名なルソーの標語が「自然に帰れ」。
しかしすでに政府ができてしまったのだから仕方がない。そこで、できてしまった政府が人々を抑圧しないようにするにはどうしたらよいかと考えた。
原理的には、支配する者がいれば、支配される者がいる。被支配者は支配者に縛られて自由を奪われる。そうならないためには、被支配者と支配者が一致すれば良いのです。自分で自分を支配することになれば不自由はなくなるはずです。政府が、みんなの意志を反映する政府であれば良い。
ルソーはそのような政府を一般意志と名付けます。誰かの特殊な意志や、一部の人の意志ではなく、各人の共通の利益を反映する意志だと考えてください。一般意志は社会を形成する人々の意志と同じなのです。
このような一般意思が現実に実現するかというと難しいです。人数が少なければ可能です。例えば家族。お父さんとお母さんと子供が二人いる家族。今度の日曜日はどこに遊びに行こうかという話になる。お父さんが絶対的な命令を発動して、「今度の日曜日はみんなで釣りに行くのだ、みんなついて来い」というと、みんなは「えーっ」となる。そうではなくて四人で話し合って、「今度はみんなで USJ に行こうか」とみんなの意見が一致して決まる。こうなると USJ に行くのは誰かの命令ではなく、自分の意志が反映されているので不満は残らない。
四人ならば一般意志を形成できるけれども、1億2000万人の日本人全員が話し合って一般意志を形成して、誰もが支配されている感覚がなく生活できるかというと、これは非常に難しい。現実には難しいけれどもこれを理想とします。
ルソーが具体的に考えていたのはスイスの直接民主制です。現在、スイスでは形の上で直接民主制を維持しています。ルソーの思想は、現在世界で広がっている間接民主制ではなく、古代ギリシャのポリスのような直接民主主義に対応していると言っていいでしょう。