A弁証法
現代の私たちにとって、ヘーゲルが重要なのは、彼の哲学の中身ではなく、このように考えるヘーゲルの発想の方法だと思います。
何かがまずあって、それに対する別のものが生まれてきて、この二つを統一するものが現れて、新たな段階に発展する。対立物から新しいものが生まれてくる、こういう発想の仕方を弁証法と言います。
弁証法は、すべての精神や事物の発展の論理です。弁証法は非常に有効な考え方で、後にも多くの哲学者や思想家に取り入れられています。
最初の状態が「正・テーゼ」。それに対して登場する対立物が「反・アンチテーゼ」。この対立矛盾から、二つを統合した高次の段階のものが生まれる。これが「合・ジンテーゼ」です。
対立を統合する過程のことを「止揚・アウフヘーベン」と言います。新たに誕生した「合・ジンテーゼ」も、やがて新たな「正・テーゼ」に転じ、またこれに対する「反・アンチテーゼ」が生まれ、この対立矛盾が止揚されて次の「合・ジンテーゼ」が生まれる。このようにして発展が続きます。
物自体にアクセスできないというカントの結論に不満。世界の普遍認識にアクセスする方法として、認識のとらえ方に時間軸を導入した。認識は常に高度なものへ変化する。カントのように固定された認識の枠組みではない。(竹田青嗣『哲学とは何か』p52)
多分こんなふうに考えたのではないかと思います。まず自我があります。カントやシェリングでいえば、理論理性や実践理性を働かせる自我が存在している。自我が存在すると、それ以外のものも存在します。非自我です。ヘーゲルの言葉で言えば、自然が存在する。自我と自然が対立・矛盾する。これが統合されて次の段階に発展する。何に発展するかといえば、ヘーゲルは観念論者ですから、次の高次の段階の自我に発展する。こんなふうに自我がどんどんどんどんと高次の段階に発展していくと考えました。