時間切れ!倫理

 188 マルクス 1

 社会主義者の中で一番有名な理論家がマルクスです 。マルクス主義というのは聞いたことがあると思います。マルクスの横にあるエンゲルスにも線を引いておいてください。二人は、ほとんど一緒に活動をしている。ニコイチです。『資本論』がマルクスの代表的な著作物ですが、非常に膨大な書物でマルクスは完結する前に死んでしまった。残された原稿をエンゲルスが整理して続きを発表しています。『共産党宣言』は二人の共同執筆です。それ以外にも共同執筆している本がたくさんある。
 二人ともドイツ人ですが、反政府的な出版物を出したことによってドイツから追い出され、二人とも後半生はほとんどイギリスで暮らしています。エンゲルスは、父親がイギリスで工場経営をしていて、それを継ぎます。経済的には安定している。マルクスは研究に没頭して働いていない。たまに雑誌に原稿を送ったりして、わずかに収入があるだけです。非常に貧しい。このマルクスの生活をエンゲルスが援助するという関係です。
 マルクスの『資本論』は 、資本主義経済の分析を行います。資本主義はどのように動いているのか。どのようにして搾取は生まれるのか。そういう問題を経済学的に研究して、その上で社会主義への展望を考えました。その点でオーウェン、サン=シモンやフーリエなど、直感で社会主義を構想した人とは違う。そこでマルクス、エンゲルスの社会主義理論を科学的社会主義といいます。というかエンゲルスが自分たちを「科学的」といい、オーウェンなどを「空想的」と名付けたのでした。
 経済学的な話は少し置いておいて、倫理の授業なのでそれに関する点にふれておきます。
倫理に関わる問題としては「労働の疎外」があります。疎外という言葉が出てくれば、マルクスだなと思ってください。何を言っているのか。資本主義社会において労働者は自分が自分でなくなるという。 自分が自分のもので無くなってしまうことが疎外。
 資本主義社会でなぜそうなるかと言うと、1.生産物からの疎外。自分で作ったものが自分のものではない。普通に考えると自分で作った物は自分の物ですよね。資本主義社会になる前の封建社会を考えてみましょう。江戸時代の農民が作った米は農民のものです。ただし封建社会なので大名が作った米の半分を年貢としてよこせと持っていってしまうけれども、残りは自分のものです。しかし資本主義社会ではどうなるか。例えば労働者が工場で車を作る。自分が作った車だけれども、初めから自分のものではありません。工場を経営している資本家のものです。本来、自分の作ったものは自分のもののはずなのに、資本主義社会では自分が作ったものが自分のものではない。当たり前のように思っていたけれども、言われてみれば「なるほどな」です。
 2.労働過程からの疎外。自分の働きたいように働けないことです。江戸時代の農民が米を作る時に、明日は朝何時に起きて田植えをしようとか、草取りをしようとか、お腹が空いたから休憩しようとか、もう日が暮れるから家に帰って寝ようとか、自分で考えて働きます。誰かに命令をされているわけではない。しかし労働者は決められた時間に会社に行って、今日は何をやれと命令されて働く。自分が働いているのに、自分で計画を立てて働くことができない。自分が自分のものではなくなっています。
 3. 類的疎外・人間疎外。人間らしさを失っていく。生きがいを感じられない。
 こんな風にして自分が働いているのに、労働時間の朝9時から夕方5時までは、自分が自分のものではなくなる。これを労働の疎外とか、人間の疎外とかという言い方をして、資本主義社会の問題だと考えます。
 これが解決されなければ、賃金が上がっても、労働者は決して幸せにはならないわけです。

2025年7月14日

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