レーニンはロシアの革命家です。哲学的には価値があるわけではありませんが、マルクスの死後、『帝国主義論』という本で帝国主義段階の資本主義経済の分析をしました。また1917年、第1次世界大戦の末期にロシアで社会主義革命を成功させ、世界初の社会主義政権であるソビエト社会主義共和国連邦を建設した人物です。
レーニンの社会主義理論は、マルクス主義に基づいています。ですから、マルクス主義の理論が現実に社会主義の国を生み出したわけです。ただ、ソ連は1991年に崩壊します。それまでも、ソ連社会のマイナスの面もさまざまに明らかになっており、ついにはソ連が崩壊したことで、マルクス主義に対する評価も地に堕ちました。
しかし、21世紀になって資本主義社会の行き詰まり、格差の拡大などをうけ、再びマルクス主義を含む社会主義が世界で脚光を浴び始めています。アメリカの大統領選挙はバイデンさんが当選するようですが(2020年段階)、民主党内での大統領候補決定時に、バイデンさんと最後まで争ったサンダースという人は、自分で自分のことを社会主義者だと言っています。アメリカで社会主義者が大統領候補として最終段階まで残るなど、一昔前では考えられないような事態です。サンダースの支持者には若者がすごく多くて、それはなぜかというと、ひどい格差に若者はうんざりしているからです。社会主義が掲げる平等の思想に親近感を持っているようです。
日本でも大学四年間奨学金を受け続けると卒業時に借金300万円。300万円の借金を背負って社会に出て行くわけでしょ。正社員になれればまだ返済できそうですが、派遣社員になったり、コロナで首を切られるような時代になってくると、奨学金の借金を抱えているだけで人生重たいです。22歳、借金300万円、定職なし。これでもすごいと思うけれども、アメリカの大学授業料は、日本と比べ物にならないくらい高い。大学生の借金も桁が違う。莫大な借金を抱えた若者たちが、もう勘弁してくれということで社会主義思想に惹かれていく。そんな感じになっていると思います。マルクス主義を含む社会主義が再評価されつつあるという話でした。
次は、社会民主主義の話です。レーニンは武装蜂起という手段で革命を起こしてロシアで社会主義を実現しました。ロシアは1905年の日露戦争の後、ようやく国会が開設された国で、議会の歴史は10年と少ししかありませんでした。しかも、基本的にはツァーリズムという皇帝専制政治の国です。このような国で政治を変えるには、武装蜂起しかなかったのかもしれません。
しかしイギリスのように議会制が発展した国では、議会を通じて民主主義的な手段によって社会主義を実現しようという考え方が主流でした。社会主義と民主主義を合わせたもの、これを社会民主主義といいます。現在のヨーロッパではこちらが主流です。
イギリスで20世紀のはじめ頃に、フェビアン協会という社会主義団体が活動をしていました。これは上流階級、インテリたちが中心です。中心人物はウェッブ夫妻。それ以外には劇作家のバーナード=ショーや SF 作家のH.G. ウエルズが参加していたことで有名です。ウエルズは『タイムマシーン』『宇宙戦争』が代表作。時間旅行というアイデアで SF 小説を書いた初めての人です。透明人間もウエルズですね。このフェビアン協会が現在のイギリス労働党の源流の一つでもあります。
20世紀初頭のドイツの政治家では、ベルンシュタインという人が社会民主主義の人として名前が上がります。ドイツの社会主義政党であるドイツ社会民主党は、伝統的にマルクス主義の影響が非常に強かったのですが、その中でベルンシュタインは社会民主主義を唱えました。マルクス主義者からは修正主義者としてあまり評判は高くありませんでしたが、ドイツでも社会主義といえば、いまやこちらが本流です。