時間切れ!倫理

25 ソクラテス:人物

 そういう人たちが活躍する紀元前5世紀後半ばのアテネに登場して活躍するのがソクラテスです。ソクラテスから現代にまでつながる倫理や哲学が始まります。ソクラテスの偉大さとの対比で、ソフィストたちは実際の価値以上に低く見積もられているところはあると思います。

 かれはアテネで生まれ、アテネで死にます。生粋のアテネっ子。ちょうどペロポネソス戦争末期の時期とかれの人生は重なります。若いときから哲学の勉強をしていたようです。ソクラテスの彫像は教科書にも資料集にも載っている。あまりイケメンではない。
 そんなことはどうでもいいようですが、これも彼の特徴の一つとしてとりあげられる。見た目にこだわらない男です。ソクラテスは、外見には一切関心がなく、寒い冬も暑い夏も同じ服を着て、裸足でアテネの街をうろつき回る。うろつき回っては色々な人に議論を吹きかける。変わった男として有名でした。

 当時のアテネでは、ソクラテスのことをソフィストの一人と考える人も多かったようです。世界史に出てくる古代ギリシアの喜劇作家、アリストファネスの『雲』という作品では、ソフィストとしてソクラテスが登場します。実際に彼の議論は面白かったし若者たちに多くのことを教えたので、彼の周りにはいつもたくさんの友人や若い弟子たちが付き従っていました。しかし、ソフィストとは決定的に違うところがあった。

 ソクラテスは、決して授業料を取りませんでした。金儲けのための哲学ではなかったのです。

 また、ソフィストのように真理が人によって違うとは考えなかった。「ソフィストの相対主義に反対」とプリントに書いてありますが、誰にとっても共通な真理、正しさ、善があると考え、それを追求し実践しようとした一生でした。

 ソクラテスは、その生涯で一つの作品も書き残しませんでした。ですから彼がどんな人物だったかというのは、彼の友人が書き残した記録(クセノフォーン『ソクラーテスの思い出』)、それから彼の弟子プラトンが書き残したソクラテスを主人公にした様々な作品からうかがい知ることができます。そして、その生き方が後世に大きな影響を与えたのです。

 2021年05月14日

次のページへ
前のページへ
目次に戻る