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 59 旧約聖書

 ユダヤ教の聖典は『旧約聖書』です。『旧約聖書』という名前はキリスト教徒による呼び名で、ユダヤ教徒自身は『旧約聖書』とは呼んでいません。他称です。ユダヤ教徒はタナハと呼びます。『律法』『預言者』『諸書』の三つの部分からなっていて、その頭文字をとった呼び方です。
 ユダヤ教からキリスト教が分かれて生まれた時に、イエスの伝記や、イエスの弟子の手紙などをまとめた聖典が作られました。これが『新約聖書』です。「約」とは「契約」のことで、イエスと神との「新たな契約」をしるしたものがが『新約聖書』。イエス以前の人々と神の契約を「古い契約」と考え、ユダヤ教の聖書を『旧約聖書』とキリスト教徒たちは呼んだ。しかし、ユダヤ教徒にとっては、全く古くなんかない。『旧約』というのは、あくまでもキリスト教徒からの呼び方だというのは理解してください。
 キリスト教徒は『旧約聖書』をどう見ているかというと、これも信じています。キリスト教徒は『旧約』プラス『新約』を聖書として信仰の対象にしています。本屋さんで『聖書』を買うと、二つがひとつの本に入っています。もちろんユダヤ教の人は、『新約』は関係ないので『旧約』しか見ません。
 『新約聖書』はイエスが死んでから100年ぐらいしてから徐々に作られ始めて200年か300年ぐらい後にできた。『旧約聖書』はその動きに刺激されてまとめられたといわれます。もともと存在していた様々な文書ががまとめられて、今のような形になった。時期としては紀元後一世紀ぐらいじゃないかとされています。まとめられたのがそのくらいの時期で、当然はるか以前に成立していた文書もある。何百年という長い時間の中で作られてきた様々な文書が、ガチャンと一緒になって『旧約聖書』になったのです。

※創世記から申命記までの5書(「トーラー(律法)」)は前5世紀頃成立、 カトリック教会の「正典ラテン語訳聖書(ウルガータ)」は382年から405年にかけてヘブライ語、ギリシア語の原テキストから翻訳された。

 2021年12月10日

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