時間切れ!倫理

 68 旧約聖書 モーセ1

 旧約聖書の話の最後に一番大事なモーセの話をしておきます。
 イスラエル人が住んでいたパレスチナ地方は乾燥地域で、生活が非常に厳しい。いつの頃か飢饉が起こって一部のイスラエル人たちがエジプトへ移住したという話はしました。実際にあったことのようです。
 移住というけれど、これは難民です。今でも難民になる人たちがいます。戦争などで国から逃れて他国へ行く。来られる側からすると人道的には受け入れなければならないけれど、正直なところ迷惑なところもある。今から2800年以上昔のエジプトでも事情は同じ。エジプトはイスラエル人たちを受け入れはしましたが、差別的な扱いをして、何世代か後にはかれらの境遇は奴隷同様になる。
 旧約聖書ではこんな話になる。
 イスラエル人たちは奴隷の境遇なのだけれど、どんどん人口が増えてくる。エジプトのファラオ(聖書では”パロ”、王のこと)は、これに脅威を感じて、新しく生まれた男の赤ちゃんを殺すように命令を出します。新生児はエジプト兵に殺されたのでしょう。
 ちょうどこの時に生まれたのがモーセです。お母さんは赤ちゃんを救うために、生まれたばかりのモーセを籠に乗せてナイル川に流した。これが水浴びをしに来ていたエジプトの王女様に見つけられる。
 王女様はこの赤ん坊の出生の秘密など知らないので、そのまま連れて帰って自分の養子として育てた。王女の養子なので、イスラエル人のモーセはエジプトの王子として立派な青年成長していった。彼は自分の出生の秘密を知らないはずなのだけれども、実はお母さんがモーセをナイルに流した時に、お姉ちゃんが籠の行方を見届けていました。そんなことから、モーセはやがて出生の秘密を知る。そのこと隠していますが。
 ある時、工事現場で働かされているイスラエル人が、現場監督のエジプト人になぐられているのをモーセは目撃する。おもわずイスラエル人の立場になってしまって、なぐっていたエジプト人を殺してしまう。そのことが発覚したモーセは逃亡します。多分アラビア半島方面に逃げて、遊牧民の一部族と一緒に過ごすようになる。やがては部族の娘と結婚もする。
 そんな暮らしをしているある時、羊の群れを追って荒野の果ての山の中に入っていった。そこで燃える柴、燃え続ける炎を見つける。柴がメラメラ燃えているのだけれど、柴はいつまでたってもなくならない。不思議に思ってその炎のそばに近づくといきなり声が聞こえてくる。
 「ここに近づくな。サンダルを脱げ」
 サンダルを脱げということは、ここは神聖な場所だから入ってくるなということです。慌てて脱ぐと、続けて声が聞こえてくる。モーセよ、お前はエジプトに戻れ。戻って奴隷となっているイスラエル人たちをエジプトから救い出せ、とその声はいう。明らかに神の声なわけです。

 2022年1月21日

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