(カ) 活動における奇跡
新約聖書を読んでいると、イエスは様々な奇跡を起こしています。教科書に載っていませんが、あまりにたくさん出てくるので紹介しておきます。
一番多いのが病気を治す。病人が湯治している施設に訪れて、動けなくなっている人に触れると、その人が急に元気になり、立ち上がって家に帰ったとか、生理痛で苦しんでいる女性がイエスの衣にちょっと触ると治ったとか、そういうことで評判になります。
イエスが説教に訪れる場所に、病人が集まってくる。それをイエスが触れることで癒す、そのような場面が結構出てきます。信じる信じないは皆さんの自由ですが、いっぱい出てくる。それも信者が増えていった理由の一つだと思う。
少し話がそれますが、病癒しにこんな話がある。狂人がいた。その男は墓場で素っ裸になって大声で叫びまわり、自傷行為を繰り返している。鎖で拘束しても、鎖を引きちぎって暴れる。みんながイエスを連れてきて、何とかしてくださいと頼む。そこで、イエスはこの狂人にとりついていた悪霊を退散させて治療した。この時の悪霊の名前が聖書には書いてある。その名前がレギオン。これはローマの軍団のことです。何か政治的なにおいがする。奇跡として書いてあることを、そのまま受け取っていいのかどうか。興味深いところです。
イエスが貧しい信者の結婚式に招かれていったら、水がワインに変わったという「カナの饗宴」。たくさん集まった信者に食事を配ったところ、いくら配ってもパンと魚が無くならなかったという「パンと魚の奇跡」、などなど。極め付きは、処刑されたイエスが復活したという話でしょう。
イエスの教えは、ユダヤ教の指導者たち、パリサイ派からするととんでもない伝統社会・宗教に対する破壊行為です。最終的にイエスはユダヤ教の指導者たちに捕まえられ、ローマ総督によって処刑されてしまう。
裁判にかけられて処刑された時には、信者たちの多くはイエスを見放していました。救世主だと信じていたのに、救世主が簡単に捕まって死刑になるはずがない。あいつは救世主じゃなかったんだというわけです。わずかな女性信者だけが、イエスの死を見届けたらしい。その女性信者たちが、処刑後にイエスの遺体をひきとりにいったところ、死体置場から遺体が消えていた。
このことは事実らしいのですが、その後、この話にどんどん尾ひれがついて広がっていきます。イエスは生き返った、復活したのだ、という噂が広まるのです。