時間切れ!倫理

 84 イスラームの教え

(ア) 一神教、イスラーム、ムスリム  イスラームの教えとはどんなものか。当然、一神教です。イスラームとは神への帰依の意味です。信者のことをムスリムと呼びます。ムスリムは神に服従するものという意味。
 信者の共同体がウンマ。アラブ人は国家を形成する前にイスラーム教によって統一されたので、信者たちは国に対してではなく、「自分たちは皆ウンマの一員、同じ信仰の仲間」という気持ちでつながっています。現在はイスラーム世界にも複数の国家がありますが、それでもインドネシアのムスリムも、エジプトのムスリムも、国境を越えて自分たちはウンマの一員・仲間だという意識を持っているそうです。国よりも宗教が優先します。エジプト人、インドネシア人というような国民としての意識よりも、ムスリムとしての意識のほうがより強いそうです。

(イ) クルアーン
 ムハンマドはこの宗教を作った後も、しばしば神の声を聞きました。ムハンマドに神の声が聞こえる時は、周りの人が見ていても「あ、来た」とわかったそうです。突然体がブルブル震え始める。その状態で喋りだすと、韻を踏んだ美しい文章で話したそうです。ムハンマドには文学的な才能は全くない。だから、これは本当に神の言葉だと信じた人もいたといいます。
 ムハンマドが美しい文章を喋り始めると、周りにいる書記がトランス状態のムハンマドが語る言葉を書き留めました。
 ムハンマドが亡くなったあとで、書き留められた言葉をまとめたものが「クルアーン(コーラン)」です。だから「クルアーン」に書かれている言葉は、神の言葉そのものなのです。
 ムハンマドはアラブ人なのでアラビア語で話しています。だからクルアーンもアラビア語で書かれています。当然ですね。クルアーンは日本語にも訳されています。しかし、神はアラビア語で話しているので、日本語に訳したクルアーンは本当のクルアーン、つまり神の言葉そのものではない。だから、もし皆さんがイスラーム教に入信したら、クルアーンをアラビア語で読み、アラビア語でお祈りできなければいけません。

(ウ) シャリーア…イスラーム法
 イスラーム成立初期のころ、ムハンマドが生きている時代ですが、日常生活で必ず発生するような様々なトラブル、金銭問題、取引上のいざこざ、離婚、遺産相続など、問題が起きると、皆ムハンマドのところに来て相談をしました。彼に解決策を委ねるわけです。
 ムハンマドが神がかりになって話した言葉の中には、このようなトラブルに対処するためのものもあります。未亡人や孤児を大事にしろというようなこともたくさん書かれています。それらが、のちにムスリムの生活の規範になっていきました。
 しかしクルアーンには、全ての問題に対処できるほど様々なことが書かれているわけではありません。ムハンマドはトランス状態ではない時も、信者の相談に答えて様々なことをいっています。ムハンマドが話した様々な言葉、 また彼が示した態度、そういうものをまとめたものがシャリーアです。クルアーンとシャリーアが、イスラーム法というイスラーム教の法律の根拠となりました。

 2022年6月25日

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