時間切れ!倫理

 85 六信五行

(エ) 六信五行…ムスリムが信ずべきこと、ムスリムの義務  六信五行とはムスリムが信じなければならないこと、実行しなければならないことです。
 六信とは神、天使、啓典、預言者、来世、天命(すべては神の意志)を信じること。
 神、これを信じるのは当たり前ですね、宗教ですから。よくアラーの神といいますが、アラーは神の名前ではありません。アラビア語で「神」のことです。英語でいえばGodです。定冠詞のついた The God、これがアラーと同じ意味です。「アラーの神」といいますが、これはおかしないい方で「神の神」といっているのと同じです。 いつのまにか日本人はアラーを神様の名前だと勘違いしているのでしょう。
 では神様の名前は何か。もう分かると思いますが、この神がノアやアブラハム、モーセにお告げをし、 預言者エレミヤにもお告げをし、イエスにもお告げをした。さらに自分にお告げをした、とムハンマドは考えているのだから、この神は、戒律では名前をいってはいけないので本当はダメですが、あえていえばヤハウェです。アラーを信じることこれが一番目。
 天使は神の召使いみたいなものです。ムハンマドが最初に金縛りにあった時に目の前に魔人が現われたとされていますが、 後からムハンマドはこの魔人を大天使ガブリエルだと解釈しています。神の取り巻きの天使の存在を信じること。
 啓典はクルアーンのことです。預言者はムハンマドのこと。ユダヤ教もキリスト教も同じですが、 神が天地創造でこの世界を作ったと考えるので、 世界には始まりと終わりがある。この終末の後に来世がある。来世に人は復活して天国へ行く。これが来世。
 天命は、全ては神の意志だと信じることです。冗談みたいによくいうのですが、ムスリムの人と待ち合わせをする。明日駅前に9時に会おうと約束しても、1時間遅刻してくる。その時に彼らは謝罪しない。「インシャラー」 つまり「神のご意志である」という。1時間遅刻したのは私のせいではなく、神のご意志によってそうなったのである。私のせいではないといって悪びれない。こういう考え方は一般的のようですね。(踏み込んで言うと、イスラームでは一瞬一瞬この世界を神が創造していると考えます。そこから、人間には自由意志はないという理屈が生まれ、遅刻は私のせいではない、神の意志だということになるようです。)

 五行は、信仰告白、礼拝、断食、喜捨、巡礼。
 信仰告白は声に出して「アラーは偉大なり、ムハンマドは神の使徒なり」と唱えることです。礼拝は正式には1日5回、メッカに向かって礼拝をすること。ハイウェイを走っていたサウジアラビアのトラック運転手が、礼拝の時間になったのでトラックを停めて砂漠に降り立って礼拝をしている写真を見たことがあります。
 日本に住んでいてもムスリムはメッカに向かって礼拝しなければいけないけれども、日本ではイスラーム文化が根付いていないので、例えばエジプトから留学してきたムスリムの学生が、 授業中の午前10時に「礼拝の時間が来ました」と、教室で突然メッカに向かって礼拝ができるかというとそれは無理ですよね。イスラーム教の国であれば、皆がやっているので大丈夫ですが、 そうでない地域では無理。そういう場合は、朝と夜だけでいい、 昼の3回は省略してもいい、というような形で、柔軟に運用されています。

 2022年7月2日

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